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土地区画整理事業では、将来の市街地形成を予想して道路を計画しています。今日のような自動車の時代に車が自由に出入りできないような土地では宅地として適当ではありません。
従ってどの宅地も道路に面するように、またその土地の利用上必要な道路巾員を確保するように道路を計画しなければなりません。、また、道路の機能は単に交通をさばくだけでなく、通風、採光、日照等の住環境の確保に重要な役割を持つ空間となり、さらに上下水道、電気・ガス等の供給処理施設を収容する空間にもなっています。そこで、道路巾員が狭いことは、環境上からも生活の利便上からも問題であり、市街地にはある程度の道路面積が必要なのです。
新しく学校用地を生み出す必要がある場合、の方法としては次のようなものがあります。
- 町村が学校用地とする目的で地区内で散在する土地を先行的に購入し、これらの土地を、事業計画で学校用地として定められた街区に集約換地する。
- 事業計画で学校用地として定めた街区を保留地として、これを市町村に売却する。
- 土地区画整理事業では、主として施行地区内に猛住する者の利便に供する施設のため新たに必要な土地は、施行前の土地がなくても創設換地として定めることかできる(法95条3項)ことになっており、義務教育施設としての小・中学校はこの利便施設に該当するのでこの方法により土地を確保する。
3.による場合には、公共団体等施行の事業では、土地区画整理審議会の同意を要し、組合施行では、総会又は総代会の議決を要します。
土地区画整理事業は一定の区域において公共施設と宅地の計画的配置、すなわち土地利用の再編を行うことによって一体的に都市基盤を整備する事業ですから、公共施設の新設、変更及び宅地の整形化等のためには、建築物の移転が必要となります。もちろん建築物の移転をなるべく少なくするよう努力しますが、建築物の分布状況によってはどうしても移転は避けられない場合が多いのが実情です。また、あまり建築物の移転を避けることに固執すると、十分な環境の改善を図ることができず、将来に悔いを残すことにもなりかねませんので、ご理解下さい。
曳家工法による移転が可能であると施行者が判定した場合、その移転料の補償内容には、曳移転の途中で家か崩れるようなことがないように充分に検討して必要な補足材費用等も含めることとなっています。
したがって、施行者が直接施行する場合はもちろん、建物所有者が業者に行わせる場合でも、そのようなことが起こることは一般的には考えられません。
しかし、実際に事故が起きた場合には次のようになります。まず、建物所有者が業者に行わせた場合、選んだ移転業者が移転可能と判断して受注した工事で生じた事故であれば、受注者の責任ですから施行者としては補償しません。
また、施行者が直接施行で実施した工事で生じた事故であれば、施行者が必要な補償を行います。
建物を所有者が自ら移転する場合には、施行者はその建物を仮換地に移転するため通常生ずる損失を補償しますが、この移転を機として、建物所有者が自費を加えて建物を新築したり、改築したり、または除却することは自由です。
ただし、この場合でも、指定された移転期日までには従前地を明け渡さなければなりません。
事業の施行に伴う建物の移転は、従前地上にある建物を、その規模、機能等における同一性を失わないよう仮換地に移すのが原則です。しかし換地先の建築規制条件が従前地のそれと異なる場合などにおいては、建物が建築基準法上の用途、建ペイ率、容積率等の規制に抵触してしまうことがあります。
このような場合、できるだけ換地先の建築規制に適合するように移転して、将来に問題を残さないようにすることが最も望ましい解決策です。
ただし、個別的な事情もあることですから、施行者としても、このような場合には建物所有者と十分相談した上で、建築行政側と対応について協議することとしています。
移転する建物に居住する者が、建物を移転するために要する期間中、仮住居を必要とする場合には、仮住居を一時借り入れるために必要な家賃又は間代相当額、及び権利金等の費用が必要な場合にはその相当額を施行者が補償しますので、その仮住居で生活していただくことになります。自ら仮住居をさがすことができない場合には、必要に応じ施行者が仮住居をあっせんする場合もあります。
土地区画整理事業により鉄道の駅前広場の整備を行う場合には、協定に基づいて、通常、旅客会社等が広場面積の駅本側1/6の面積部分について用地補償費および工事費を負担することを原則としています。その他の部分の費用については、土地区画整理事業施行者側が負担することになります。
ただし、駅前広場は通常都市施設として都市計画決定されていますので、用地取得費を含め国等の助成の対象となっており、地権者の実質的な負担にならないのが一般的です。
建物の移転に伴って、その建物で行っている営業を一時休止(中断)する必要があると認められるときは、営業の休止について次のような補償がなされます。
- 営業休止の補償(通常の場合)
- 移転期間中の収益減(個人の場合は所得減)
- 休業中の公租、公課等固定的経費
- 従業員の休業手当相当額
- 店舗等の位置変更により一時的にお得意を喪失するごとによって生ずる損失
- 仮営業所を設置して営業を継続する必要がある場合(銀行、病院、保育所等)
- 仮営業所設置費用(地代等を含む)
- 仮営業所であることによる収益減(個人の場合は所得減)
- 従前の事業所から仮営業所へ、仮営業所から新事業所(換地先)への移転費用、その期間の休業による損失
この他に事例が少ない特殊な場合として、 1、営業廃止の補償 換地先において従前の営業の継続が不可能となると認められるもの 2、営業規模縮小の補償 建物又は工作物の一部を除却することによリ、通常営業の規模を縮小しなければならないと認められたもの がありますが、それぞれ個別的な条件によって判定されることになります。
土地区画整理事業では、道路、公園等の公共施設を整備すると同時に、住民が所有している個々の土地についても、その従前の条件を考慮しながら、より利用しやすくなるように土地の再配置を行います。この再配置において、事業施行前の個々の土地に対して、事業により代わりに置き換えられた土地を「換地」といいます。
換地には、事業施行前の個々の土地についての所有権、借地権、永小作権などの権利がそのまま移っていきます(法104条1項)。
街区、区画道路、公園等の設計の技術的基準は、土地区画整理法施行規則第9条に定められているほか一般的な標準があります。
これらの中から各地区の状況に応じて最もふさわしいものを適用していますが、街区の標準的な大きさ、形などは施行後の土地利用計画により異なります。例えば住宅地の場合、区画道路の巾員は原則として6m以上とする(規則9条3号)ことになっており、公園は原則として地区面積の3%以上の面積を確保しなければならない(規則9条6号)ことになっています。
その他土地区画整理全体の設計の基準としては、1.画地、街区、2.道路、3.公園緑地、4.排水施設、5.供給処理施設、6.公益施設、7.宅地造成等の項目があり、これらは「区画整理計画標準(案)」に具体的に示されています。
土地区画整理事業の工事が完了すると、遅滞なく従前の土地に関する権利を換地に移行し、清算金等に関する権利義務を確定するための換地処分をしなければなりません。この換地処分の基礎となる事項を定めたものが換地計画(法87条)であり、その内容は次のようなものからなっています。
- 換地設計(従前の土地と換地の位置、形状の関係を示した図面)
- 各筆換地明細(従前の土地と換地の所在、地番、地目、地積等の関係の明細書)
- 各筆各権利別清算金明細(従前の土地と換地の所在、地番、地目、地積、権利価額及び清算金を各筆、各権利別に表示した明細書)
- 保留地その他特別の定めをする土地の明細
換地計画は、施行者が案を作成し、それを施行者(個人施行者を除く)が二週間公衆の縦覧に供します。利害関係者はこの期間内にこの案についての意見書を施行者に提出することができることとなっており、施行者はこの意見書の内容を審査して採否を決めます。また、施行者が換地計画案を作成しようとする場合及び意見書の内容を審査する場合には、公共団体等施行事業では、土地区画整理審議会の意見を聴かなければならず、組合施行事業では、総会又は総代会の議決か必要です(法88条1~6項)。
なお、意見書が農地法上の農地又は採草放牧地に係るものであり、かつ、意見書の提出者が施行地区内の地権者以外の者であるときは、施行者(個人施行者を除く。)は、管轄の農業委員会の意見を聴かなければなりません(法88条7項)。
このようにして定めた換地計画については、施行者が個人、組合、市町村、又は機構・公社であるときは、都道府知事の認可を受けなければなりません(法86条)。
学校、病院、鉄道、墓地、行政施設、公益施設等の用に現に供している土地については、位置、地積等について特別の考慮を払って換地を定めることができます(法95条1項)。この場合の位置についての特別の考慮とは現地換地等を内容とし、地積についての特別の考慮とは無減歩、減歩の緩和、増換地等を内容とします。
これらの土地について特別の考慮が認められているのは、その位置、地積などを変えると、その施設の機能を維持することができなくなる場合もあり、一般の土地と同様に換地を定めることが適切でない場合もあるからです。
この特別の考慮を払う場合には、施行者が公共団体等であるときは、土地区画整理審議会の同意を必要とし(法95条7項)、施行者が組合のときは、総会又は総代会の議決が必要です。
換地計画において、従前の土地に代わるものとして定められた土地を換地といいます。この換地を定める際には、換地と従前の土地の位置、地積、土質、水利、利用状況、環境等が総合的にみて照応するように定めなければならないとされています(法89条)。そして、従前地と換地の各筆の価額を評価し、原則としてすべての筆の利用価値が高まるように換地が設計されることとなります。
公共団体等施行の場合、災害を防止し、衛生の向上を図るため宅地の地積の規模を適正にする必要がある場合には、地積が小さい宅地について過小とならないように換地を定めることができる(法91条1項)ことが法律により認められています。この場合の過小の基準は100?u以上(特別の区域では65?u以上)に定める(令57条2項)ことになっています。したがって過小宅地という用語は、この規定によるものに限ります。
この方法による場合、換地が基準地積以下となる土地については、換地を基準地積以上とするために減歩を調整し、その分は清算金を徴収することとなり、著しく小地積の土地については換地を定めないで清算金を交付することになります。
ただし、これらの措置を講ずる場合には土地区画整理審議会の同意が必要(法91条2項)です。しかし、実際には減歩が調整され増換地となる人の清算金が大きくなること、換地を定められない人が賛成しないことなどの理由で、審議会の同意も容易に得られないので、適用例もあまりまりません。
そこで、昭和63年には過小宅地に対する新たな救済策として、共有換地制度が創設されました。
なお、この方法以外に小規模宅地に対する実質的な減歩の救済措置をとっている例があります。
土地区画整理事業では、事業の施行上必要な段階で、従前り宅地に代えて仮に使用し、収益することができる一定の土地を指定できる(法98条1項)ことになっており、この土地を仮換地といい、この仮換地の位置、地積等を権利者に通知する行為を仮換地指定といいます。
施行者は、宅地造成や道路等の工事を実施しながら、逐次従前の土地の権利を新たに造成された仮換地へ移しかえて事業を進めていきます。したがって、仮換地指定の時期はいちがいに特定できない場合が多いのですが、建物移転や工事の計画からみて、必要な区域から順次行うこととなります。
この指定については、公共団体等施行事業重は土地区画整理審議会の意見を聴いて、組合施行事業では総会又は総代会の議決を経て行います(法98条3項)。
なお、借地権者等についても同様に仮に当該権利の目的として使用収益できる土地またはその一部の指定を行います。
仮換地とは、従前の土地に代わって仮に使用収益をすることができる土地として施行者から指定された土地をいいます(法98条1項)。ただし従前の土地の所有権や従前の土地の上に存する権利が従前の土地から仮換地へ移動したわけではなく、従前の土地に係る権利についての使用収益が停止され、その代わりに仮換地上においてほぼ同等の使用収益ができることとなったに過ぎません。したがって、仮換地指定後において例えば土地を売買する場合には、当該仮換地に対応する従前地が売買されることとなり、この従前地の買主が当該仮換地を売主から引き継いで使用収益することとなります。
これに対し換地とは、工事概成時以後に行われる換地処分によって最終的に従前の土地とみなされる土地(法104条)です。したがって、地権者が従前地について有していた所有権その他の権利は特別なものを除き、すべて換地に移行します。
なお、仮換地は一般に将来そのまま換地となる予定の土地として定められています。
土地区画整理事業施行中の土地の売買には特に制限はありません、しかしながら、仮換地は、従前の土地に係る権利の使用収益が停止された代わりに同等の使用収益ができる土地として施行者から指定された土地にすぎません。したがって、仮換地を売買するときは、その仮換地に対する従前の土地を売買する形式を踏み、従前の土地の所有権の移転登記を行って、その仮換地の使用収益権を取得することになります。
なお、土地の売買については、その土地について換地処分に伴う清算金(徴収または交付)の問題もありますので、施行者に相談して下さい。
仮換地に使用収益の障害となる物件がある場合、その他特別の事情がある場合には、仮換地について使用収益を開始することができる日を仮換地の指定の効力の発生の日と別に定めます(法99条)。
この場合、仮換地の指定の効力の発生の日から、使用収益開始日の前日まで、従前の土地も仮換地も使用収益することができないことになりますので、このことによって損失が生じた場合は施行者が補償します(法101条)。
仮換地の指定に不服がある人は、その土地区画整理事業が市町村または組合施行である場合には都道府県知事に、都道府県または機構施行である場合には国土交通大臣に、それぞれ行政不服審査法に基づく審査請求をすることができます。
さらに、都道府県知事がした審査請求に対する裁決に不服がある場合には、国土交通大臣に再審査請求をすることかできます。
審査請求は、書面をもって、処分があったことを知った日(仮換地指定の通知を受けた日)の翌日から起算して60日以内に行わなければならず、再審査請求は裁決のあったことを知った日の翌日から起算して30日以内に行わなければなりません。なお、このことについては、仮換地の指定に際して、注意事項として地権者にお知らせします。
換地計画は、最終的な権利を確定する重要な計画ですから、内容を利害関係者に熟知してもらうため、2週間公衆の縦覧に供します。利害関係者は、縦覧期間内に施行者に意見書全提出することができます(法88条)。
提出された意見書については、公共団体等施行事業の場合は土地区画整理審議会の意見を聴いて(法88条)、組合施行事業の場合は、総会又は総代会の議決により採否を決定し(法31条)、採用するものについては換地計画を修正し、採用できないものについては、その旨を意見提出者に通知します。
なお、換地計画を縦覧に供しようとする場合には、公告のほか公共団体の公報、ハガキ等により縦覧の日時、場所を権利者に知らせます(令55条の9)。
換地により家の出入口が逆になる場合には
- 玄関の位置を変えるだけでよい場合
- 玄関の位置を変えて、部屋の間取りも変える必要がある場合
- 建物ごと回転する必要かある場合
等が想定されます。実際の事例がこの中のどの場合に当たるかを客観的に判断した上で、施行者が必要な改修費用の補償をします。
換地処分とは、土地区画整理事業の工事の完了後(または概成時)に、関係権利者に、換地計画で定められた事項を通知する行政処分です(法103条1項)。
また、換地処分をした場合は、その旨公告(法103条4項)することになっており、この公告によって次のような効果(法104条)が発生します。
- 換地計画で定められた換地は、公告の日の翌日から従前の土地とみなされる。
- 換地を定めなかった従前の土地についての権利は、公告があった日が終了した時に消滅する。
- 清算金は、公告の日の翌日に確定する。
- 保留地は、公告の日の翌日に施行者に帰属する、
- 公共施設用地は、公告の日の翌日にそれぞれの公共施設管理者に帰属する。
保留地予定地(換地処分前の保留地)の売買は、施行者が換地処分後に買主に所有権を移転することを条件とする売買ですから、換地処分前に買主が保留地予定地の所有権移転登記をすることはできません。
保留地予定地は、換地処分の公告の日の翌日に施行者が原始取得し、施行者が所有権保存登記をすることとなりますので、その後、施行者と買主の間で保留地について所有権移転登記をすることとなります。
なお、登記ができないために保留地予定地の購入資金の借入れに不都合が、出るような場合には、施行者に相談して下さい。
財団法人区画整理促進機構では、住宅ローンを利用して保留地を購入する場合に、換地処分後抵当権が設定されるまでの間の融資保証を行っています。また、金融機関によっては、施行者の保留地売買証明等があれば、換地処分後に抵当権を設定することとして融資することもあります。
土地区画整理事業は、その施行地区の全体について、公共施設を整備改善し、土地の利用を増進させるために行う事業です。
したがって、何らかの理由で、位置、地積とも変らない換地を定められたとしても、公共施設の整備等により土地の利用効率が増進することが一般的であり、この場合、当然その増進の範囲内の清算金を負担していただくことは、受益の範囲内での負担ですから何ら不合理なことではありません。
土地区画整理事業の事業認可から換地処分の公告に至るまでの期間は、施行地区の面積、整備される施設、移転する建物数など事業の内容により大きく左右されますが、近年の例では、組合施行で5~6年、公共団体施工でで8~9年が平均となっています。なお、個々の事業の施行期間は事業計画の中に定められることとなっています(法16条、54条)。
買収方式で道路や公園をつくる場合、これらの施設の用地として定められた区域内の土地は買収され、その土地に住む人達はこの地域外に土地や住まいを求めて出ていかなければなりません。反面、今まで裏側であった土地が新たに道路に面することとなって利用価値が上がるなど、地域の人々が道路や公園の整備によって受ける利益の度合を公平なものにするのはなかなか難しいものです。また、買収された残地が不整形になったり、小規模な宅地が残ったりして、土地の有効利用が図れないこともあります。さらに、すべての道路や公園まで買収方式で整備することは、行政の財政力からみて非常に困難であり、完成までにたいへんな長い期間を要することとなります。
ところが、土地区画整理事業の場合は、それぞれの土地は、従前の土地の状況に留意しつつ、道路や公園の整備から受ける利益の度合に応じて減歩され、かつ整形された換地に置き換えられます。このため、地域の人々の受益と負担の公平と土地の有効利用が道路や公園の整備と同時に図られることとなります。
また、土地区画整理事業では、幹線道路整備のための国の補助制度や公共施設管理者負担金の制度が活用できることとなっており、行政サイドも相応の費用負担をすることとしています。そこで、道路や公園について早急に整備を行うためには、土地区画整理事業によって受益と負担の公平を確保しつつ整備することが、住民にとっても行政にとっても有効です。
地積が小さく、通常の減歩を受けると有効な土地利用ができなくなるという宅地を救済する方法の一つとして昭和63年に創設された制度です。
具体的には、地積が小さな宅地の所有者とその宅地に隣接する宅地の所有者の申出があったときは、換地計画において、それらの者に施行地区内の土地の共有持分を与えるように定めることができることとしたものです。
土地区画整理組合を設立するためには、まず施行地区内の土地の所有者または借地権者が7人以上共同して定款と事業計画をつくり、都道府県知事に対して土地区画整理組合設立認可を申請します(法14条1項)。
この場合、申請に先立ち、定款と事業計画について土地の所有者及び借地権者のそれぞれ2/3以上の同意を得なければならず、かつ同意をした者の土地及び借地の総面積が施行地区の土地及び借地の総面積の2/3以上(法18条)でなければなりません。また、土地区画整理事業では公共施設の整備改善も行いますので、これら道路、水路等の公共施設管理者の承認(法17条)を得なければなりません。
認可の申請があると、事業計画を市町村長が2週間縦覧し、意見書の選出があれば、知事はその採否を決定した後(法20条)、組合の設立を認可し、公告します(法21条3項)。
組合が施行する土地区画整理事業の施行地区内の土地について所有権又は借地権を有する者は、すべてその組合の組合員になります(法25条1項)。
宅地の共有者又は共同借地人は、あわせて1人の所有者又は借地権者とみなされます(法130条1項)。この場合代表者1人を組合に通知しなければなりません(法130条2項)。
(代表者選任届を提出)
法人名儀で土地を所有し又は借地権を有する場合には、当該法人も1人の組合員になります(法25条1項)。
都市再生機構、地方住宅供給公社、地方公共団体、政令に定められた公共法人等であって、組合が都市計画事業として施行する土地区画整理事業に参加することを希望し定款で定められた者は、参加組合員として事業に参加することができます(法25条の2)。
土地区画整理組合を設立しようとする者(発起人)は7人以上共同して(法14条1項)施行地区となるべき区域の公告を当該市町村長に申請し、市町村長はこれを公告します(法19条1項、2項)。公告の日から1月以内に、未登記の借地権者は書面によりその種類及び内容を当該市町村長に申告しなければなりません(法19条3項)。その後、土地所有者及び借地権者に対し、定款及び事業計画についての同意書を提出してもらう(法18条)ことになります。
組合の運営は、議決機関である総会、執行機関としての理事、監査機関としての監事によって行われます。
総会は組合員全員により組織し(法30条)、法律や定款に定める事項を審議し、組合の意思を決定します。組合員数が100名以上の組合では、組合員の互選による総代で組織する総代会を設置することができます(法36条、37条)。この場合、総会の権限は一定のものを除き総代会が行使することとなります。
理事(5名以上)は、組合の事業の執行機関であるとともに、対外的な関係では組合の代表機関となり、総会又は総代会で決定された事項を処理します。
監事(2名以上)は、組合の業務の執行及び財産状況について監査を行うために置かれます。(法27条、28条)
また、理事の諮問機関として、土地の評価や建物の評価を行う評価員を定款で定めて選任することができます。
このように、組合の運営は、組合員の意思により民主的に行われます。
組合施行の事業は住民の皆さんの自主的な街づくりですが、都道府県知事及び市町村長に対し、事業に関して専門的知識を有する職員の技術的援助を求めることができる(法75条1項)ことになっています。土地区画整理組合の設立準備から事業の完了に至るまで、地方公共団体からの技術援助が重要となりますので、地方公共団体と密接な連絡を保ちつつ進めていくことになります。
この他、地方公共団体は重要な公共施設等に対して、一定の条件のもとで公共施設管理者負担金(法120条1項)や補助金等の助成をします。このように、組合と地方公共団体が一体となって円滑な事業運営を図ることが事業を成功させる要因だと思われます。
組合施行の場合、組合の業務の執行は理事が行う(法28条1項)ことになりますが、事業の専門的知識を必要とすることから、市町村の技術的援助を求めることができる(法75条1項)ことになっています。
経理等の事務は担当理事の監督のもとに組合職員が行いますが、設計の方針に係るもの、施行管理等安全に係わるもの等事業の基本的事項及び委託しにくい業務を市町村が代行している例も多くみられます。その他の、工事の設計・積算・監督、移転補償の積算、換地計画等の技術的な業務の多くは、市町村の指導のもとで土地区画整理協会(あるいは都市整備公社)及び専門のコンサルタント等に委託されているのが実情です。また、土地区画整理士を活用することも有効な方法となっています。
工事の説明会、移転補償等権利者との交渉を伴うものは、組合の理事を中心に市町村の協力を得ながら行われることとなります。
土地区画整理事業は、事業に必要な土地を地区内の地権者から少しずつ出していただく仕組みになっており、従前の土地は、それぞれ面積が減少した土地に置き換えられることになりますが、この個々の土地の面積が事業により減少することを「減歩」といいます。
減歩はその目的により「公共減歩」と「保留地減歩」に分けられます。「公共減歩」とは、事業により道路、公園等の公共施設が整備されますが、その公共施設の用地を確保するための減歩をいい、「保留地減歩」とは、事業費の一部に充てるために売却する土地(これを保留地という。)を確保するための減歩のことをいいます。
この減歩は、もちろん施行者が無制限に行うことができるのではなく、原則的には土地の区画が整ったことや公共施設が整備されたこと等により、各々の土地について生じる利用価値の増進の範囲内で行うことができるものです。この範囲を超える場合でも金銭により補てんされるので、個々の地権者の財産権を侵害することはありません。
- 所有者か自ら移転する場合
建築物等を移転したことにより次表に示すような損失が生じた場合には、施行者が、所有者や借家人等に対して補償します。 - 施行者が移転する場合
下表に示すような補償金のうち、施行者が直接行う部分を除いて、所有者や借家人等に対して補償します。
なお、建築物について、法令の規定に違反していたため是正命令が出されているものについては、自ら移転した場合補償されませんし、施行者が移転を実施した場合にはその費用を徴収されます。(法78条参照)
補償一覧表
建築物を賃貸借している場合
補償項目 | 自分の家の場合 | 建築物を賃貸 所有者 |
借している場合 借家人(間借人) |
---|---|---|---|
建物移転料 | ○ | ○ | × |
工作物移転料 | ○ | ○ | ○ |
竹木及び土石 | ○ | ○ | ○ |
等移転料 | |||
動産移転料 | ○ | × | ○ |
仮住居補償 | ○ | × | ○ |
営業補償 (営業している場合) |
○ | × | ○ |
家賃減収補償 | × | ○ | × |
移転雑費 | ○ | ○ | ○ |
注:○印は該当する項目×印は該当しない項目
土地区画整理事業における減歩は、事業における公共施設の整備や土地の区画の整形化等によって生じる土地の利用価値の増進の度合の範囲内で行われるものです。つまり、地権者にその受益の一部を負担してもらうものであり、土地のただ取りではありません。もっとも、特殊な場合として、公共施設の用地が大量に必要となる事業では減歩率が高くなり、全体として換地の財産価値が従前より低くなることがありますが、この場合には、減価補償金が交付されて(法109条)地権者に損失を与えないように配慮されることとなっています。さらに、換地の利用価値の増進について地権者相互間の不均衡を是正するために、清算金の徴収・交付が行われます(法94条)。
以上のことから、減歩は地権者の財産の価値を減少させるものではなく、憲法に規定する財産権の保護に違反するものではありません。また、このことは、すでに最高裁判所の判決の中でも認められています。
土地区画整理事業は、公共施設の整備改善のために必要となる用地や保留地を、各地権者が土地を出し合う減歩方式によって生み出す事業であり、原則として減歩のかわりに金銭で精算することはできません。
なお、清算金は換地設計上の技術的な困難や、法に定める過小宅地や特別の宅地に関する措置によって生じる換地の不均衡について、地権者間の公平を保つために金銭で精算するものであり、減歩のかわりに金銭によって精算する趣旨のものではありません。
既成市街地において、公共団体等が駅前広場、都市計画道路等の大規模な公共施設の整備を行うために施行する土地区画整理事業においては、当該公共施設の用に供する土地が大きくなるために宅地の面積が減少し、したがって施行後の宅地の総価額が、施行前の宅地の総価額よりも減少する場合があります。このような場合には、施行者は地権者に対してこの減少した額に相当する金額を交付しなければなりません(法109条1項)。これが減価補償金といわれているものです。
つまり減価補償金は、次のような算定式で表わされます。
減価補償金総額=施行前宅地総価額-施行後宅地総価額=施行前宅地平均単価×施行前宅地総地積-施行後宅地平均単価×施行後宅地総地積
施行者が減価補償金を交付しようとする場合には、各権利者別の交付額は土地区画整理審議会の意見を聴いて決定されます(法109条2項)。
なお実際には、この事業計画で定められた減価補償金に相当する資金で、施行者が道路、広場等の公共施設用地に充てるための土地を先買いし、公共減歩率を緩和して、個々の地権者には補償金として支払わない方法が一般的に行われています。この場合、先買いに応じた者の土地の譲渡所得については、税法上土地収用対象事業と同様の5,000万円の特別控除等が認められております。
建築協定(建築基準法69条、70条)とは、住宅地としての環境や商店街としての利便を高度に維持増進する等のため、土地所有者及び借地権者が一定の区域を定め、その区域内における建築物の敷地、位置、構造、用途、形態、意匠又は建築設備に関する基準について一定の取決めをするものです。建築協定を結ぶためには、土地所有者及び借地権者全員合意のもとに知事等の認可を受けなければなりません。
地区計画(都市計画法12条の4)とは、地区の状況や特性に応じて宅地回りの道路、公園等の地区施設の配置や建築物の敷地面積、用途、建ぺい率、容積率、壁面の位置等に関するきめの細かな計画を策定し、これに基づいて必要な建築行為、開発行為等の誘導及び規制を図る制度で、地区計画は都市計画として定められます。
つまり建築協定や地区計画は、主に建築行為の規制誘導によって良好な街づくりを行おうとする制度ですが、一方、土地区画整理事業地区内においては、事業の実施に伴い大量の建築活動が誘発されることから、良好な市街地の形成のために施行地区内でこれらの制度を積極的に活用する必要があります。建築協定や地区計画は、換地手法により都市基盤を整備する土地区画整理事業と併せて活用することによって、大きな効果が得られるともいえるのです。
それぞれの言葉を解説すると次のようになります。
現地換地…従前の土地とほぼ同じ位置に定められる換地
飛換地… 従前の土地の位置が道路、公園等の用地になるなどの理由で、従前の土地の位置から飛び離れた位置に定められる換地
合併換地…同一所有者の複数個の土地について、まとめて1個の土地として定められる換地(一括換地)
分割換地…従前の土地が面積の大きい1個の土地で、1つの街区に入らない等の理由で、複数個に分けて定められる換地
集約換地…複数個の散在する土地について、土地の利用目的に適合するよう、1箇所にまとめて定められる換地(集合換地)。同一所有者の土地のみの場合と、複数所有者の土地にわたる場合がある。一般に、公的機関等が学校、行政施設等の用地を確保するために、整理前に散在する土地を購入し、これらの土地についてまとめて定める換地をさすことが多い。また、特定土地区画整理事業の集合農地区や共同住宅区のように希望者の土地をまとめて換地することもある。
土地区画整理事業は道路・公園等の公共施設の整備及び宅地の利用増進を図る基盤整備事業であり、建築物の整備は一般に事業の内容ではありません。しかし、これらの基盤整備をするだけでなく建築物も整備する必要がある場合には、市街地再開発事業等との同時施行をおこなったり、民間の共同ビル化を促進したり、あるいは地区計画や建築協定を活用して、総合的な市街地整備の促進を図ることとなります。
憲法では、財産権は公共の福祉に基づく制限に服するものとされており、この制限に伴って生じる損失に対して補償を要するのは、この制限が一部特定の者の財産権に対する一定限度を超えた制限である場合に限られると解されています。さて、問題の土地区画整理事業の施行地区内の建築行為の制限(法76条)ですが、まず、この制限が健全な市街地の形成という公共的な要請に基づく制限であることは明らかです、さらに、この制限は、地権者全員の財産権に対するものであり、かつ一定の限度内の制限ということができます。それゆえ、この建築行為の制限については補償の対象とはなりません。なお、そもそもこの制限は、事業施行上の支障と、権利者の無用の損失を防ぐことを目的とするものですから、できるだけ仮換地の指定まで待って、移転等の必要がない建築がなされることが望まれます。
土地区画整理法では、公共施設や宅地について特別に定義しています。すなわち、土地区画整理事業では、道路、広場、公園、緑地、河川、水路、運河、船だまり、堤防、護岸および公共物揚場で公共の用に供する施設を「公共施設」といいます(法2条5項)。
また、国又は地方公共団体所有の公共施設の用に供されている土地(公共施設用地)以外のすべての土地を「宅地」といいます(法2条6項)。
したがって、公共施設の用に供されていても民有地であれば宅地です。また地目が田、畑、山林、原野等であっても地目にかかわらず宅地といいます。
学校、公民館や鉄道等は公益的施設ではありますが、土地区画整理法上は公共施設ではありませんので、これらの用地は宅地として取り扱われます。
小宅地について通常の減歩をするとさらに過小となりますので、その結果、災害の防止、衛生環境の改善または宅地の利用の増進上好ましくない場合が予想されます。
このような場合には、次のような方法が考えられます、
- 減歩が少なくなるような位置に換地を定める。
- 宅地(借地)地積の適正化(公共団体等施行事業に限る。)(法91条、92条)
過小宅地(借地)の基準を定めて、その地積以下にならないようにする。この場合、通常の減歩を負担した換地地積と実際に定められた換地地積の差分について清算金を徴収する。又は、過小宅地の地権者及び隣接する宅地の所有者の申出に基づき共有換地を行う。 - 減歩緩和方式
一定の地積以下の土地について減歩を緩和し、緩和についてはこれに相当する清算金を徴収する。 - 付保留地または付換地
保留地または公共団体が所有する土地の換地を小宅地の換地に隣接して定め、これを当該所有者に売却する。
これらの方法については、公共団体等施行では土地区画整理審議会に諮って、組合施行では総会または総代会の議決を経て、対応することになります。
耕地整理をしていない土地とは別の扱いをしてもらえるのですか。
耕地整理は農地としての利用を増進するために行われるものですから、都市的な土地利用をするためには都市基盤としての道路や公園等の整備水準をもっと高める必要があります。土地区画整理事業は市街地としての良好な環境を整備していく事業であり、個々の宅地の減歩は、土地の都市的な利用の増進の度合に応じて決まりますので、耕地整理をしているからといって特別の扱いはできません。しかし、一般的な傾向としては、耕地整理されている土地は、耕地整理されていない土地に比べて広い道路に面していたり、形が整っていたりするため、整理前の宅地としての利用価値が高く事業による宅地の利用の増進の度合が小さいことから、相対的に減歩負担も小さくなる場合が多いようです。
土地区画整理事業で、幹線道路・公園・河川等の重要な公共施設の用地を提供する場合には、これらの公共施設の新設・変更の事業を行うべき者に対して、事業の費用の負担を求める公共施設管理者負担金(法120条1項)の制度があります。
土地区画整理事業の施行者が公共施設管理者負担金を求めるときは、あらかじめ公共施設管理者と協議し、その者が負担すべき費用の額及び負担の方法を事業計画に定めなければなりません(法120条2項)。また、その負担の額は当該公共施設の用地の取得に係る用地費及び補償費の範囲内で定められます。
ただし実際の負担金の事例のほとんどは、公共施設の管理者がその施設に対する国の補助を受けて、管理者負担金を出しています。
なお、当該公共施設の工事は通常公共施設の管理者が行います。
一般的に、既成市街地における事業および幹線道路等の公共施設整備を主目的とする事業では公共団体施行が多く、新市街地の開発を目的とする事業などでは土地所有者が率先して行う組合施行が多いようです。
ただし、減価補償金を要する地区の場合は、公共団体等の施行に限られます(法109条)。
保留地をとるのは不当ではありませんか
土地区画整理事業において地区内の主要な公共施設を整備するときには、多くの場合、国や公共団体がその事業費の一部を補助又は負担することになっています。しかし、これでは十分でありませんので、保留地を確保して事業費に充てることになります。公共団体施行では地区全体において施行後の宅地価格の総額が施行前の宅地価額の総額を超える場合、その差額の範囲内で保留地を定めることかできる(法96条2項)ことになっており、つまり、地権者の皆さんの土地の利用価値の上昇という受益の範囲内で保留地を定めることができるにとどまるものですから、地権者の皆さんの財産権を侵すことにはなりません,従って保留地をとるのは決して不当なことではありません。
公園は、環境の保全や災害時の避難場所として、また、レクリエーションやいこいの場として、都市においてうるおいのある豊かな生活をするためには欠かすことのできない施設です。
公園面積の基準としては、土地区画整理法施行規則9条に地区面積璽3%以上と規定されています。これは、上記のような効用のある公園の面積を大きくすればする程一方では減歩率が高くなりますので、地区内に最小限確保すべき公園面積の割合が3%であることを示した趣旨のものです。
また、この数字は、100haの規模の住区において児童公園(標準面積0.25ha)4ケ所、近隣公園(標準面積2ha)1ケ所合わせて3haを想定して定められたものです。
またそれをいつごろ知らせてもらえるのですか
公共団体等施行の事業では、事業計画が認可されると、おおむね100日以内に土地区画整理審議会が設置されます。施行者は、この時期になると、換地設計基準及び土地評価基準を定めて、土地区画整理審議会と評価員に諮りながら、従前の土地の位置、地積、形状等に十分配慮して換地設計を行い、個々の換地の位置や減歩率を決めていくことになります。
そして、この換地設計に基づいて、土地の造成、建物移転等の工程に合わせて、順次、各権利者に仮換地の指定(法98条)を行うのが普通です。この指定により仮換地の位置、地積、形状が権利者に示され減歩率もこのときに明らかになります。
組合施行の事業では地権者の意見を反映しつつ換地の設計を行ったうえ、総会又は総代会の議決を得て同様に仮換地が指定され、仮換地の位置、減歩率等が明らかになります。
清算金については、仮換地指定後、事業が進捗し、換地処分を行う前までに算定され、換地計画案の縦覧(法88条2項)によって権利者はその額を知ることができます。また最終的には個々の権利者に換地処分(法103条1項)によって、文書で通知されます。
土地区画整理事業に参加できるのは、事業の施行地区内の土地について所有権または借地権を有する人で、これらの人々は通常、「地権者」と呼ばれています。
このほかにも、個人施行においては、一定の者で所有者または借地者の同意を得た者はこれらの者に代わって同意施行者として、また、一定の者で都市計画事業として施行される組合土地区画整理事業に参加することを希望して、定款で定められた者は参加組合員として事業に参加することができます。
公共団体、機構等が施行する事業では、この「地権者」は土地区画整理審議会の委員の選挙権・被選挙権を有することとなり(法63条)、組合施行の事業では、「地権者」はすべて組合員になる(法25条)など事業においてたいへん重要な役割を果たします。
なお、事業計画や換地計画について意見を提出てきるのは、地権者に限らず、事業に関係ある土地や水面、またはこの土地にある建物などについて権利を有する者とされています(法20条2項、55条2項、88条3項)。
借地権や借家権等の権利は、土地区画整理事業が行われるとどうなるのですか。
土地区画整理事業は、事業実施後も原則として従前の権利関係をそのまま継続させる事業ですから、借地権はその目的となる土地に換地が定められれば、その換地の上に権利が存続しますし、その他の土地に関する権利も同様です。ただし、原則として地役権は従前の土地の上に残ります(法104条)。
借家権は、建物がそのまま移転した場合はその建物上に権利が存続しますが、当事者問で協議が整った場合は移転に合わせて建物を新築し、新たに借家権を設定することもあります。
なお、借地権その他の土地の上に存する権利で登記されていないものについては、施行者がそれを知ることができないために、換地計画の作成などの場合にこれらの権利を有する者に対し適切な配慮が行えないおそれがあるので、これらの未登記の権利は施行者に申告しなければならないこととされています(法85条)。
公公共団体施行の場合
- 事業の都市計画決定
公共団体が住民の意見を反映しつつ決定します。 - 基本調査・現形測量
事業計画案の作成のため、土地、建物等を正確に把握します。 - 事業計画案等の作成
施行者か作成し縦覧により利害関係者の意見を求めます。 - 事業計画の決定
事業計画の一部である設計の概要について、知事又は国土交通大臣の認可を得て事業計画を決定します。 - 権利の申告
未登記の借地権等を有する者は、施行者に申告しなければなりません。 - 土地区画整理審議会委員の選挙
地区内の土地所有者の代表及び借地権者の代表等が委員に選任されます。 - 換地設計
整理後の個々の土地(換地)の位置、面積、形状等を設計します。 - 仮換地の指定
移転や工事の必要から、、土地区画整理審議会の意見を聴き、仮の換地を指定します。 - 建物の移転、道路等の工事
現在地から仮換地へ建物等を移転し、併行して道路等の工事を行います。 - 換地計画案の作成
換地図、各筆換地明細等を作成し、縦覧します。 - 換地計画の認可
知事の認可を要します。(都道府県知事が施行する場合には不要。) - 換地処分・換地処分の公告
換地計画の内容を関係権利者に通知し、併せて公告します。また、公共施設の管理の引継ぎを行います。 - 土地・建物の登記
土地・建物の変動に伴う登記を施行者がまとめて行います。 - 清算金の徴収・交付
換地計画に定められた清算金について徴収・交付を行います。
組合施行の場合
- 組合設立準備会の発足
発起人が集まって、発足させます。 - 事業の都市計画決定(都市計画事業として行う場合)
公共団体が住民の意見を反映しつつ決定します。 - 基本調査・現形測量
事業計画案の作成のため、土地、建物等を正確に把握します。 - 定款案、事業計画案の作成
発起人が作成します。 - 施行地区の公告・縦覧
発起人の申請により市町村長が行います。 - 借地権の申告
未登記の借地権を有する者は市町村長に申告しなければなりません。 - 同意書のとりまとめ
土地所有者及び借地権者から定款・事業計画についての同意をとりまとめます。 - 組合設立の認可
市町村長が事業計画を縦覧に供した後、知事が認可します。 - 権利の申告
未登記の借地権等を有する者は施行者に申告しなければなりません。 - 組合設立総会
理事、監事等を選出します。 - 換地設計
整理後の個々の土地(換地)の位置、面積、形状等を設計します。 - 仮換地の指定
移転や工事の必要から、総会または総代会の議決を経て仮の換地を指定します。 - 建物の移転、道路等の工事
現在地から仮換地へ建物等を移転し、併行して道路等の工事を行います。 - 換地計画案の作成
換地図、各筆換地明細等を作成し、縦覧します。 - 換地計画の認可
知事の認可を要します。 - 換地処分、換地処分の公告
換地計画の内容を関係権利者に通知し、併せて公告します。また、公共施設の管理の引継ぎを行います。 - 土地・建物の登記
土地・建物の変動に伴う登記を施行者がまとめて行います。 - 清算金の徴収・交付
換地計画に定められた清算金について、徴収・交付を行います。 - 組合解散の認可
知事の認可を要します。
借家人、間借人に対しては、下表に示すもののうち、必要とするものについて、施行者が直接補償します。
種 類 (権利) | 居住のみ | 営業居住 | 間借人 |
---|---|---|---|
工作物移転料 | ○ | ○ | ○ |
動産移転料 | ○ | ○ | ○ |
営業補償 | × | ○※ | ○ |
仮住居費用 | ○ | ○ | ○ |
移転雑費 | ○ | ○ | ○ |
○ 補償金が支払われる項目
× 該当しない項目
※ 営業しているとき
個人施行の場合は事業施行地区内の地権者全員の同意(法8条)が、組合施行の場合は地権者の少なくとも2/3以上の同意(法18条)がそれぞれ事業を実施するために必要です。公共団体、機構等が施行する場合は、事業を開始する際に地権者の同意を特に確認する手続は法令には定められていませんが、土地区画整理事業は地域住民の公共の福祉に寄与することを目的とし(法1条)、また、事業の内容が個人の財産にかかわり、将来の生活設計にも関係することから、説明会などを開いて地権者の理解と協力を得るとともに、事業計画の決定や換地計画の認可に先立ち計画案を公衆に縦覧し、利害関係者は意見書を提出できる(法55条、法88条)ことになっています。
なお、事業認可後は、地権者の中から選ばれた委員等によって構成される土地区画整理審議会(法58条)の意見を聴いたり同意を得ながら、民主的に事業が進められます。
土地区画整理事業は健全な市街地を造成するという重要な事業ですから、国、都道府県、市町村等は事業に対して種々の助成制度を設けています。まず、国の助成制度には次のようなものがあります。
- 公共団体等施行に対する助成
- 国庫補助金…国が施行者に対し、事業費の一部を補助する制度です。(法121条)
- 公共施設管理者負担金…事業地区内の重要な公共施設の整備を行うべき者に応分の負担を求めるものです。(法120条)
このほか、住宅金融公庫の融資制度があり、また、地方債の起債が認められています。
- 組合施行に対する助成
- 国庫補助金…都道府県が組合に対して補助を行う場合、その一部を国が補助する制度です。
- 国の無利子貸付金…都道府県が組合に対して無利子貸付けを行う場合、その1/2を国が都道府県に無利子で貸し付けるものです。(法121条の2)
- 公共施設管理者負担金
これら以外に、都道府県、市町村においても、市町村施行、または組合施行の事業に対して、各種の助成制度を設けているところもあります。
土地区画整理事業の特長の一つは、道路、公園等の公共施設の整備をその地区の地権者全体の受益に応じた負担で行うことにあります。つまり、土地区画整理事業においては、換地手法によって個々の宅地の区画を少しずつ移動させなから、公共施設の用地を必要な位置に集めて生み出すことになるため、特定の人が用地の買収により地区内から立退かされたり、土地が一事業により幹線道路に面することとなるなどの、地権者問の負担や受益の不平等を避けることができるのです。
従って、自分の土地が計画道路や公園にかかるか否かにかかわらず地区内の地権者全員に参加していただくことになります。
集合農地区の制度は、大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法(大都市法)に定められており、従前の農地等の所有者等で土地区画整理事業の施行後も農業等の経営を希望する者に対し、申し出により、集合農地区へ換地されることができる制度です。農家の意向を十分取り入れることにより、土地区画整理事業の円滑な推進を図り、住宅地需要の逼迫している大都市圏において、大量の住宅地の供給と住宅市街地の整備の促進を図ることを目的としています。
大都市法による特定土地区画整理事業の事業計画においては、集合農地区を定めることができ、集合農地区は、施行地区のおおむね30%以内で、良好な生活環境の確保に相当の効用があり、かつ、公共施設等の敷地の用に供する土地として適している一団の農地等の区域で定めることがでぎます(大都市法17条1、2項)。
そして集合農地区への換地は、土地所有者の申し出に基づき行われ(大都市法18条1項)、集約して換地されることとなります(大都市法19条)。
事業を開始しますと施行者から関係者の皆さんに対して注意事項をお知らせしますが、その主な内容は次の通りです。
- 権利の申告
施行地区内の土地について借地権等の権利で登記の無いものを有する人は、その権利の種類と内容を所定の様式に従って施行者に申告しなければなりません(法19条3項、法85条1項、2項、3項)。この申告がないと権利者としての扱いを受けることができなくなります。 - 地積の更正申告
土地の所有者又は借地権者は、登記地積が事実に相違する時には、定められた期間内に実測をして施行者に地積の更正を申告することができます。(施行規程又は定款に定めがある場合に限ります) - 土地区画整理審議会の委員または組合の役員等の選挙
- 公共団体等施行の場合
土地区画整理審議会の委員を、土地の所有者及び借地権者はそれぞれのうちから各別に選挙します(法58条1項)。 - 組合施行の場合
各組合員は、総会に出席して役員を選び出します(法27条3項)。なお、総代会が設けらる場合には総代の選挙(法37条1項)も行います。
- 公共団体等施行の場合
- 権利の移転および土地の分筆、合筆等を行う際の協議
土地、建物等に関する権利の移転をする場合及び権利の移転に伴って土地を分筆又は合筆する場合は、事前に施行者と協議して登記所へ申請して下さい。 - 建築物の建築等に関する許可申請(法76条)
組合の設立認可の公告や公共団体等施行にあっては事業計画決定の公告の後、施行地区内において土地区画整理事業の施行の障害となるおそれがある土地の形質の変更、建築物その他工作物の新築、改築又は増築、移動の容易でない物件(重量が5トンを越えるもの)の設置又はたい積をしょうとする者は、都道府県知事の許可を受けなければなりません。知事は土地区画整理事業施行者の意見を聴いた上で、事業の障害となる建築を許可しなかったり、条件をつけたりすることがあります。そこでこれらの場合には、施行者に相談のうえ許可申請をして下さい。
賛否の表明ができませんが、いつ頃わかるのですか。
土地区画整理事業では、法に定められているようにいろいろな段階を経て事業が進められますが、それぞれの段階ごとに皆さんと相談し慎重に一歩ずつ前進していきます。
事業計画は、いわば土地区画整理事業の地区全体の青写真ですから、事業計画の作成時点では、地区全体の平均減歩率は示すことができますが、個々の土地についての詳細を示すことは不可能です、今後、詳細は段階を踏んで順次お知らせしていくことになりますが、この段階では地区全体の計画について、皆さんに御判断して頂くことになります。
事業計画が決定されると、その後換地設計を行い、それについて公共団体等施行では土地区画整理審議会の意見を聴き、組合施行では総会または総代会の議決(法98条3項)を得るなど公平を期したうえで、仮換地の指定が行われます。これにより個々の仮換地の位置、形状や減歩率か明らかになります。また、工事概成後換地計画を作成し、この中で個々の清算金が算定(法94条)されます。
土地区画整理事業は健全な市街地の造成を行う事業であり、良好な住環境を確保するために公園や緑地を新たに整備するとともに、必要な既存の緑も計画的に保全するよう配慮します。
むしろ、このまま放置しますと部分的な開発が盛んに行われ、樹林等が無計画に伐採されて緑が少ない環境の悪い市街地となるおそれがあります。
土地区画整理事業が認可されると、施行地区内の土地について登記の無い所有権以外の権利を有する者は、施行者に対し、当該権利の存する土地の所有者、当該権利の目的である権利を有する者と連署して、または当該権利を証する書類を添えて、書面をもってその権利の種類、内容を施行者に申告しなければなりません(法85条1項)。
これらの権利を有する者は申告することによって土地区画整理事業における権利者となりますが、一方申告がない場合には、事業施行上はそれらの権利が存しないものとみなされます(法85条5項)。
なお、借地権等の申告が無いとこれらを施行者が知ることができず、したがって土地区画整理審議会委員の選挙や換地設計あるいは仮換地指定等の際に適切な配慮が行われないことになりますので必ず申告して下さい。
組合施行の場合は、以上のほかに、組合設立認可以前の段階において施行地区となるべき区域が公告されると、施行地区内の土地について未登記の借地権を有する者は、公告のあっ日から1カ月以内に当該市町村長に対して前記同様の手続により、借地権を申告することになっていますが(法19条3項)、この借地権の申告をすると前記の権利の申告があったものとみなされます。
公共団体等施行の場合には個人の同意をとる手続きはありませんが、説明会等を通じて関係権利者の意見を事業に反映させ、賛同を得ながら事業の準備が進められます。また、事業計画案の縦覧に際して意見のある利害関係者は、意見書を都道府県知事に提出することができます(法55条1,2項)。
一方、組合施行の場合は地権者が主体となって事業が運営されるので、土地区画整理組合を設立して事業を進めるには定款及び事業計画について土地の所有者及び借地権者のそれぞれ3分の2以上の同意が必要で、またこれらの同意した者の所有する土地及び借地権の目的となる土地の地積の合計が、地区内全体のこれらの地積の合計の3分の2以上あることが必要となっています(法18条)。さらに、事業計画の縦覧に際し利害関係者は意見書を知事に提出することができます(法20条1,2項)。
これらの意見書は公共団体施行の場合には都市計画地方審議会がその内容を審査し、組合施行では知事がその内容を審査して、採択すべきか不採択とすべきかを決め、意見書を採択することとなった場合には事業計画に必要な修正が加えられ、意見書を採択すべきでないとなった場合にはその旨が意見書を提出した人に通知されます(法55条3,4項、法20条3項)。
事業計画(法6条、16条、54条、68条)とは、施行者が土地区画整理事業を施行するに当たって定めるその事業全体の青写真ともいうべきもので、次の内容から構成されます。
- 施行地区(則5条、8条)
土地区画整理事業を施行する地区を施行地区位置図及び施行地区区域図に表示したものです。 - 設計の概要(則6条)
設計図と設計説明書から成っています。設計図は地形、道路、建物などを測量により正確に示した現況図の上に計画された道路、公園などの施行後の公共施設等を表示した図面です。設計説明書は「当該土地区画整理事業の目的」「施行地区内の土地の現況」「平均減歩率」「保留地の予定地積」「公共施設の整備改善の方針」などを記載したものです。 - 資金計画(則7条、10条)
資金計画は、収入と支出の計画から成っています。
収入は、国等の補助金、市町村の負担金、保留地処分金等を計算した金額です。また支出は都市計画道路、区画道路、公園等の整備に要する工事費、家屋、動産、立竹木等の移転・除却に伴う損失補償金、事務費など、この事業に必要な費用を記載したものです。 - 事業施行期間
土地区画整理事業を施行する期間を定めたものです。 - 住宅先行建設区・市街地再開発事業区・高度利用推進区(定める場合)
皆さんの意見を聞きながら策定した事業計画の案ができあがりますと、説明会を開いて皆さんに詳しく説明いたします。
公共団体施行ではこの事業計画案は皆さんに見てもらうため2週間縦覧に供され(法55条1項)、意見のある利害関係者は都道府県知事あてに意見書を提出できます(法55条2項)。この意見書は都市計画地方審議会の審査を経て採否が決定されます(法55条3項)。これらの手続を経た後、施行者は設計の概要について都道府県知事または国土交通大臣の認可を受けて事業計画を決定し(法52条1項)、公告します(法55条9項)。
組合施行の場合は、組合を設立しようとする者は定款及び事業計画を定め知事の認可を申請します(法14条1項)が、その際市町村長は事業計画の縦覧を2週間行います(法20条1項)。意見のある利害関係者は都道府県知事あてに意見書を提出できます(法20条2項)。
利害関係者から意見書の提出があった場合は都道府県知事がその内容を審査し採否を決定します(法20条3項)。その後組合設立が認可され、事業計画が決定されます。
事業計画の案の縦覧は、土地区画整理事業施行地区の利害関係者の意見を事業計画に反映させるために行われるものです。通常、縦覧は市役所、公民館等の場所で行われ、その縦覧日時、場所等は公報などにより事前にお知らせします(令3条)。この縦覧の期間は、法律により2週間と定められ(法20条1項、55条1項)、この期間中は、担当職員が住民の皆さんに事業計画案について説明し、これについての疑問や不明な点についてもお答えします。
また、利害関係者は、この事業計画案に対し、縦覧期間満了の日の翌日から起算して2週間を経過する日までに都道府県知事に意見書を提出することができます(法20条2項、55条2項)。
また、その意見は事業計画にどのように反映されるのですか
事業計画の案は2週間縦覧しますので、これについて意見のある利害関係者は、縦覧期間満了の日から起算して2週間を経過する日まで(法20条2項、55条2項)に都道府県知事に意見書を提出することができます。提出された意見書は、公共団体等施行の場合は都市計画地方審議会が、組合施行の場合は都道府県知事がこれを審査し、意見書が採択された場合においては当該意見書に従って事業計画案が修正され、再度縦覧等の手続を行います。また、意見書が不採択とされた場合は不採択の旨を意見書提出者に通知します(法20条3項、4項、55条4項)。
なお今後、この他にも事業の実施について要望のある場合には、随時施行者に文書、口頭等で申し出ることができます。
事業計画で定められた減歩率は、施行地区内の総宅地地積についての平均減歩率であり、総宅地地積が事業施行前後でどのような割合で変わるかを示したもの(規則6条2項3号)です。一方、個々の宅地の減歩率は、その従前の宅地の地積に対する換地の地積の減少の割合であり、個々の宅地の整理前後の土地評価を行って計算される宅地の利用価値の増進の度合を勘案して個々の宅地毎に決められるものです。従って両者は異なります。
事業の施行中に建築行為を無計画、無統制に行うと事業の施行を阻害することがありますので、建物を建てる場合はあらかじめ都道府県知事の許可を受けなければならない(法76条)ことになっています。
一般に、仮換地指定前においては建物がすぐに移転を要することとなるなど事業の支障となるおそれが多く、建築行為は厳しく制限されます。しかし仮換地指定が行われると、仮換地として指定された土地については、土地区画整理事業における宅地造成、各種工事等と調整のうえ建物を建てることができます。
土地区画整理事業では道路、公園・広場等の公共施設を整備改善しますが、上・下水道、ガス等の供給処理施設は事業により必ず整備されるような制度にはなっていません。
しかしそれでは街づくりとしで不十分な場合があり、個々の地域毎に十分検討してこれらの施設を整備するかどうかを事業計画等で定めます。本地区の場合(A)と(B)の整備についても多くの要望があります。そこで施行者はそれぞれの管理者と協議を行い、(A)の整備を事業の中に組み入れることとし(法2条2項)、(B)の整備は関連別途事業として行うなど、同時に整備を図るよう努力しています。
(注)(A)、(B)には上水道、下水道、ガス、電気等の施設名を入れる
土地区画整理事業により、宅地の形状を整形にする(区画形質の変更)ことにより、良好な環境の整った市街地を整備することができますが、既成市街地から離れている地区では、商店や学校等の生活に必要な施設が周囲に立地していない場合もあります。このような地区では、生活の利便性が低いことから、住宅の建設が進まず、地区内で点在的に行われがちであり、このように点在的な住宅建設が行われた場合には、商店等の立地もおくれ、空き地等が残るため防犯面や居住環境等にも問題があって、全体の街づくりが遅れる場合があります。
住宅先行建設制度とは、このような施行地区において街づくりを円滑に推進するための方策であり、早期に住宅を建設しようとする意欲のある人の換地を集約し、この集約した区域での良好な居住環境やコミュニティの早期実現をはかるとともに、区域周辺への商店等の立地を誘導促進して全体の街づくりを推進しようとするものです。
住宅先行建設区は、住宅需要の著しい地域に係る都市計画区域で建設大臣が指定する区域において、施行者が事業計画で定めます(法6条2項)。次に、施行地区の宅地の所有者で当該宅地についての換地に住宅を先行して建設しようとするものは、施行者に対して、当該宅地についての換地を住宅先行建設区内に定めるべき申出を行います(法85条の2第1項)。施行者は、当該申出に係る宅地には建築物その他の工作物が存せず、また、地上権、永小作権、賃借権等の権利が存せず(住宅の所有を目的とする借地権及び地役権を除く)、指定期間(建設計画に従って住宅を建設すべき期間)を経過する日までに住宅が建設されることが確実である場合には、この申出に係る宅地を住宅先行建設区内に定められる宅地として指定します(法第85条の2第5項)。この指定された宅地について、所有権または借地権を有するものは、換地処分の公告があった日の翌日から指定期間を経過する日までに、当該宅地についての換地に建設計画に従って住宅を建設する必要が生じます(法117条の2第1項)。
この、住宅先行建設区は、施行後の市街化促進の核となる位置で、面積はおおむね1ha以上の区域です。
また、住宅先行建設区に既に住宅の用に供されている宅地を含めた場合には、その宅地については、住宅先行建設区内に換地を定めることとします。
なお、住宅先行建設区に建設可能な住宅は、専用住宅及び延べ面積の1/2以上を居住の用に供する併用住宅です。
事業施行前の個々の土地には、道路に面しないもの、形状が悪いもの、低湿地となっているものなどがありますが、これらの土地については、事業により道路に面し形状が整った利用効率が高い土地となるように造成して換地を定めます。
したがって、このような従前の利用効率の低い土地は、従前もある程度利用効率が高かった土地に比べて利用の増進の度合が大きいため、同じようなところに換地された場合には、従前の利用効率の高かった土地よりも減歩率が高くなります。
つまり、個々の土地の減歩率は、その土地の事業施行前と施行後の状況により決まるもので、一律に定められるものではありません。
換地を定めるための基準となる従前の土地の地積を決定する方法については、規準又は規約(個人施行の場合)、定款(組合施行の場合)、施行規程(公共団体等施行の場合)で定める(令1条2項)こととなっています。
その主な方法としては次のようなものがあります。
- 土地登記簿による方法
原則として土地登記簿地積をそのまま基準地積とするが、登記地積と実測地積に差が認められるものについては、一定の期間内に土地所有者から申請を受け、施行者が確認したものは、その地積を基準地積とする。 - 各筆の実測地積による方法
施行者が各筆の実測を行い、その実測地積をそのまま基準地積とする。 - 測量増減地積を土地登記簿地積で按分する方法
登記地積と実測地積に差があるもので、一定の期間内に土地所有者から申請を受け、施行者が確認したものはその地積を基準地積とし、その他の土地については、施行者が道路、水路等によって囲まれた街区の地積を実測し、登記地積と実測地積とに差異があった場合には、その差をその街区内の登記地積で按分し更正した地積を基準地積にする方法。
以上のうち3.が最も一般的な方法として採用されています。
土地区画整理事業を施行する土地の区域を施行地区といいます。この施行地区は、都市計画区域内において(法2条)、都市全体の都市計画に整合させながら、土地区画整理事業による市街地整備の効果が最も高くなるように定められます。
施行地区の規模は、予想される事業費や施行期間、財政力や施行能力、地権者の意向等を考慮して定めます。
また、施行地区の範囲は、施行予定地区外の公共施設や宅地の状況を考慮しつつ、原則として道路、河川等事業施行により位置の変わらないものを境界にセヨして、その範囲を事業計画において定めることとなっています(規則8条1項)。
生産緑地とは、市街化区域内において現に適正に管理されている農地等について、農林漁業との調整を図りつつ、良好な都市環境の形成に資することを目的に、都市計画において生産緑地地区として意義づけられたものです。(生産緑地法1条)
生産緑地は、生産緑地地区の区域内の土地または森林をいい(生産緑地法2条)、生産緑地地区は以下の要件に該当するものの区域について、都市計画に定めることができます。
- 良好な生活環境の確保に相当の効用をもち、かつ、公共施設等の予定地として適しているもの
- 500?u以上の規模の区域であること
- 農林漁業の継続が可能な条件を備えていると認められるものであること(生産緑地法3条1項)
生産緑地に指定されると、農地等として管理することが義務づけられ(生産緑地法7条1項)農地等以外の利用ができなくなりますが、農地等の所有者の権利救済の観点から、生産緑地に指定されてから30年を経過した場合や、主たる従事者の死亡等の場合に限り、市町村に対して時価で当該生産緑地を買い取るよう申し出ることがでぎることとなっています。(生産緑地法10条)
一般に、換地設計の際にすべての換地を過不足なく配置することは、現地の状況等により技術的に困難であり、定められる換地相互間にはある程度の不均衡が生じます。この不均衡を是正するために徴収・交付する金銭のことを清算金といいます。整理前の土地と整理後の土地をそれぞれ評価し、整理前の権利価額が整理後の評定価額より多いときは清算金が交付(権利者へ支払う)され、整理前の権利価額が整理後の評定価額より少ないときは、清算金が徴収されることになります。従って、清算金は減歩に対する補償金ではありません。
なお、公共団体施行の場合の清算金の額については、法律にもとづいて任命された評価員にはかり(法65条1項、3項)、さらに土地区画整理審議会の意見を聴いて(法88条6項)定められます。
土地区画整理事業の施行者となり得るのは、土地区画整理法により、個人、土地区画整理組合、地方公共団体、都市再生機構、及び地方住宅供給公社種類と定められています。土地区画整理事業の施行は、様々に私権の制限や強制を伴うものであることから、これら施行者ごとにその進め方には厳格な手続き等が定められています。
個人施行者 土地所有者もしくは借地権者または一定の者でこれらの者の同意を得た者(同意施行者)が当該権利の目的となる宅地について1人または数人共同して行う(法3条1項)ものです。
組 合 土地所有者または借地権者が7名以上で共同して組合を組織して行う(法3条2項、法14条1項)ものです。
地方公共団体 市街地の整備,居住環境の向上などを目的として、都道府県・市町村が行う(法3条3項)ものです。
都市機構等 住宅地の供給等を目的として、都市再生機構、地方住宅供給公社が行う(法3条の2、法3条の3、法3条の4)ものです。
なお、農住組合(農住組合法第8条)は法3条1項の数人共同で施行する土地区画整理事業の施行者とみなされます。
生活環境の整備は土地区画整理事業の大きな目的の一つであり、したがって設計は生活環境の整備を念頭において行われます。具体的には、生活道路からの通過交通の排除や自動車と歩行者の分離等の交通対策、公園や緑地の系統的配置による緑化やオープンスペースの確保、下水道等の排水施設整備、学校やコミュニティ施設などの計画的配置があげられます。このような多くの課題に対応するためには、個別事業の組合せで効果的に整備することはなかなか難しく、むしろ土地区画整理事業によって面的に総合的に整備することにより、環境の良い都市が効果的に実現できるといえます。
交付清算金については、土地区画整理事業の施行に伴って強制的に実現した譲渡所得であるとして課税の特例が認められており、次のうちのどちらか一方の適用を受けることができます。
- 清算金で新たに土地等の代替資産を取得した場合には、清算金についての譲渡所得税は非課税とする。(ただし、清算金の一部で取得した場合は、取得価額まで非課税とする。)
- 精算金のうち5,000万円までの額は、譲渡所得税の課税対象から控除する。
しかし、特例の適用は内容的にも複雑で難解な点が多いので、所轄税務署の判断をまって、必要な手続をすることになります。
なお、土地所有者の申出または同意により換地を定めない場合(法90条)に交付を受ける清算金については、この課税の特例の適用はありません。
整理後の土地の地目は、換地処分時の状況によって定められ、施行者が登記の手続を行います。
土地区画整理事業では、地区内の道路や街区が大きく組みかえられて街並が一変します。
したがって、換地は従前の町界、町名、地番と対応しなくなりますので、これらの混乱を整理することが必要となります。土地区画整理事業では町名変更や住居表示の実施は必ずしも義務づけられているわけではありませんが、日常生活の利便を考えて、換地処分と同時にこれらの変更が行われるのが通例です。この場合、換地計画を作成する段階で、換地処分後の土地の明細として新しい町名地番を設定することになりますが、町名町界については市町村長の、地番については法務局の権限に属するものですから、事前に協議をして決められます。
事業施行地区内の登記の早期完了や事務処理の円滑化の観点から、換地処分の公告があった場合、施行者は直ちにその旨を換地計画に係る区域を管轄する登記所に通知し、遅滞なく土地区画整理登記を申請し、又は嘱託することとなっています(法107条)。これにより、換地処分の内容に従って登記の変更か登記所によって行われることとなります。
なお、その土地区画整理登記の内容は、表題部と呼ばれる土地の所在について町名、地番、(地目)地積等を変更すること、土地の位置、形状を表わす図面を変更すること等であって、権利の実質を変更するものではありません。
清算金は、工事概成時の地価公示価額、固定資産税課税標準価額、相続税財産課税標準価額等を勘案して、施行前後の宅地の所有権、借地権等の価額を評価した上で算定され、換地計画の中に盛り込まれます。
ただし、公共団体等施行では土地価格、権利価額の評価に当たっては評価員の意見を聴き、また清算金の額も含めて換地計画は土地区画整理審議会の意見を聴いて作成されることとなっています。組合施行では清算金の額を含む換地計画については総会又は総代会の議決を要することとなっています。また換地計画を縦覧し、利害関係者から意見書が提出されたときは、公共団体等施行では土地区画整理審議会の意見を聴いた上で採否を決定し、組合施行では総会又は総代会の議決によって採否を決定します。さらに、市町村、組合等か施行する事業にあっては換地計画は知事の認可を要します。
このようにして換地計画が決定され清算金も決まると、換地処分の通知によって権利者に通知されます。
清算金が確定するのは、換地処分の公告があった日の翌日です(法104条7項)から、換地処分の公告の日の地権者を対象として清算金の徴収・交付を行います。
すなわち換地処分の公告の日よりも後に所有権又は借地権の異動があっても、その異動前の地権者に権利義務があり、新地権者には権利義務が承継されません。
しかし、換地処分時より前に地権者の異動があった場合には、異動前の地権者に清算金の徴収・交付び)権利義務はなく、新地権者に権利義務が承継されます。
ただし、権利の異動が換地処分の前であっても後であっても、特に当事者間で清算金の徴収又は交付の権利義務に関する特約を締結し、施行者の承諾を得た場合はこの限りでありません。
そこで、土地についての権利を異動される場合には、当事者間でこれら清算金について問題が生しないよう、施行者と十分相談するようにして下さい。
清算金は、換地処分の公告の日の翌日に確定するので、その後に徴収、交付が開始されることになります。
この場合、清算金は利子を付して分割徴収または分割交付することができます(法110条)が、その具体的な方法は施行者ごとに規約、定款又は施行規程で定められます。一般に分割期間は5年以内ですが、特に納付者の資力がとぼしいため納付することが困難と認められるときは10年以内とすることができます(令61条)。
清算金が納付期限までに納付されなかった場合、施行者は、督促状によって納付期限を指定して督促します(法110条3項)。
督促を受けた者が指定された期限までに納付しない場合には、公共団体等施行の場合には国税滞納処分の例により徴収することができます。組合施行の場合には市町村長に対しその徴収を申請し、市長村長は地方税の滞納処分の例により徴収します。また市町村長がこの申請を受けた日から30日以内に滞納処分に着手せず、または90日以内にこれを終了しない場合は、組合の理事が、都道府県知事の認可を受けて、地方税滞納処分の例により清算金(分割徴収利子を含む。)、督促手数料及び延滞金を徴収することになります。
幹線道路は、都市の根幹的な交通路であるとともに、都市骨格の形成、都市のオープンスペースの確保、良好な景観の形成等様々な役割りを果たしており、円滑な都市活動を確保するためには、土地区画整理事業の施行の有無にかかわらず必要となるものです。そこで、もし必要があれば、環境施設帯の設置による防音対策等各種の環境対策がおり込まれます。さらに土地区画整理事業で整備する場合は、道路網を段階的に構成することにより、生活道路からの通過交通の排除、歩行者ネットワーークの確保等、面的に環境上の対応策を講ずることができますので、直接買収方式で幹線道路のみを整備する場合に比べ、より良好な環境をつくることができます。
建物の移転工法には、主に次の(1)~(5)に掲げるものがあります。従前の宅地と仮換地は、位置、面積、形状が違うので、移転工法の選定については、建物の構造、換地の形状、移転の制約条件、移転の優先順位等を検討し、できるだけ従前の建物の機能と効用を損わない工法を施行者が定めま。ただし、この場合の工法は補償費算定のための工法で、自ら移転する場合の工法は建物所有者が自由に選択できます。
- 曳家工法 建物を解体しないで仮換地等に曳行する工法をいい、仮換地等との間に障害物又は著しい高低差のない場合などで、建物を解体しないで移転できると認められる場合に採用される。
- 再築工法 仮換地に従前の建築物と同種同等の建築物を再築する工法をいい、従前の土地と仮換地との間に障害物又は著しい高低差のある場合等で、曳家工法によることが著しく困難と認められる場合に採用される。
- 改造工法 建築物の内部の間取り等構造を一部改造する工法をいい、建築物の一部除却、道路位置の変更等に伴い、従前の機能を回復するための改造が必要と認められる場合に採用される。
- 除却工法 建物の全部又は一部を取りこわす工法をいい、建築物を仮換地に移転する必要がないと認められる場合に採用される。
- 復元工法 従前の建築物を解体し、仮換地に従前どおり再築する工法をいい、文化財保護法等により指定された建築物で、建築物を現形で復元することが妥当と認められる場合に採用される。なお、この工法は、土地区画整理事業の直接施行においては、一般建築物でも特別に採用しうる工法である。
道路、公園、下水道等について個別に用地を取得し、整備する手法は、その施設だけについてみれば、たしかに効果的な方法だということができます。しかし、この方法では各施設がバラバラに整備され、市街地としてみれば、総合的な生活環境がなかなか整備されないという問題かあります,これに比べ土地区画整理事業のように市街地を面的に整備する手法は、生活に必要ないろいろな施設を総合的に整備改善することかできます。
(参考)
土地区画整理事業には個別整備手法に比べて次のような利点があります。
- 市街地を面的に総合整備する手法であること。
- 民主的手続きによって進められること。
- 公平な開発利益の享受により各権利者問の公平を保証すること。
- すべての権利が換地上に移行することにより権利者が地区外に移転しなくてもよく、既存のコミュニティを維持できること。
- 多様な事業目的に対応できること。
- 多様な事業主体が施行できること。
- 多様な事業財源を活用し得ること。
- 民間活力を活用した事業であること。
- 他の事業、制度との同時施行や併用が容易であること。
仮換地が指定され、整理前の土地にある建築物その他の工作物及び樹木等を仮換地へ移転する場合には、その移転に必要と認められる費用は施行者が補償します(法78条1項)。
また、移転期間中に必要な仮住まいの費用や商売をやっている方の移転期間中の休業補償など土地区画整理事業が原因で生じた損失は、適正な算定のもとに補償されます。
土地区画整理事業で、従前の土地上にある建物その他の物件を仮換地上に移転することは、本来は施行者の義務ですので、その義務の遂行のために、施行者に権限が与えられています(法77条)。
しかしながら、建物等の所有者は、移転を機会に新築したり、改築したいということもありますので、施行者は、建物等の所有者に対し一定の期限を定めて、その期限後には施行者が移転する旨を通知するとともに、その期限までに自ら移転する意思の有無を照会します(法77条)。
したがって、定められた期限内に種々の理由により建物等の所有者が自ら移転できない物については施行者が移転することになりますが、実際には権利者が自ら移転を行うのが通例です。
この場合も、当然、建物等の移転に伴い通常生ずる損失は補償されます(法78条)が、この補償の額は従前の土地の上にある建物等を仮換地に移転するのに必要な費用であって、権利者が自らの都合で仮換地に建物を新築したり、改築したりするための費用が全て支払われるわけではありません。
建物の移転に伴う地代や家賃の引上げには、建物の移転そのものが直接の原因でなく、移転の前後に土地の利用価値の上昇があった場合に、それを契機に地代や家賃の引上げが行われることが考えられます。
また、移転を契機として、自己資金を投入して建物を新築又は改築した場合などで増額の請求があることも考えられます。
しかし、これらは当事者間の契約関係の問題であって、土地区画整理事業の範囲外のことですから補償の対象にはなりません。当時者間の協議により地代や家賃を定めてもらうことになります。(法113条参照)
門、塀などは、建物の附帯工作物として、建物と同様に移転に要する費用を施行者が補償します。庭木については移植に要する費用等を補償します。
事業着手以前の計画策定段階では、市町村や事業の研究会、準備会等が行う説明会やアンケート調査の際に、皆さんの意見や要望を聞き、事業のための当初計画である基本構想等にこれらの意見を反映させます。
事業着手後は次のようなかたちで意見が反映されます。
○公共団体施行の場合
- 権利者の意見を事業に反映させ、事業が民主的かつ公平に運用されるよう土地区画整理審議会が置かれます(法56条1項)。この審議会の委員は施行地区内の宅地の所有者及び借地権者がそれぞれのうちから各別に選出されますが、これらの他に学識経験者を施行者が選任することもあります(法58条1項)。審議会は換地計画、仮換地の指定等に関して施行者の諮問機関となります
- 事業計画や換地計画は、作成される各段階において公衆の縦覧に供され、利害関係者は意見書を提出することができます(法69条2項、法88条2項、3項)。この他いろいろな段階でも、できるだけ皆さんの意見を聞きながら事業が進められます。
○組合施行の場合
- 組合員の意向を反映する直接的な場としては、組合員全員で組織し、組合の意志を決定する総会があり、総会で種々の議決をし、また役員の選挙をします。また、組合員か100人を超えるときは総代会を設け、一定の事項について総会に代わって議決することができますが(法36条1項)、その場合には組合員から選出される総代を通して間接的に組合員の意向を反映することができます。
- 日常の業務は組合員により選ばれた理事によって運営されます(法28条1項)。
- 事業計画や換地計画は作成される各段階において公衆の縦覧に供され、利害関係者がこれらに対して意見書を提出することができます(法20条2項、法88条2項、3項)。
土地区画整理事業とは、良好な街づくりのために、乱雑な既成市街地、無秩序に市街化しつつある地域、又は新たに市街化しようとする地域について、土地の区画形質を整え、道路、公園その他の公共施設の整備改善を行う(法2条1項)事業です。
土地区画整理事業は、道路事業などのように単一の施設を直接買収方式によって整備する他の事業と異なり、面的な拡がりを持った広い地域にわたって、その地域内の道路、公園等の公共施設を一括して整備改善すること及びと土地の利用の増進を図ることの2つの目的を同時に達成することができる事業です。
これらの公共施設の用地は、事業を行う地区内のそれぞれの土地の一部を提供していただく「減歩」によって生み出され、また、一般の土地は整形された「換地」に置きかえられて、原則としてどの土地も道路に面するように配置されるところにこの事業の特色があります。
清算金の徴収・交付は換地処分時の権利者を対象として行いますが、本人が死亡している場合は、相続人の中の委任を受けたもの、または相続人全員がその権利の割合に応じて清算金の徴収・交付の対象となります。手続としては、戸籍騰本、印鑑証明等相続関係を証明する書類を添えて所定の様式に従って届出てもらうことになります。
そこで相続の手続か行われていない場合は、できるだけ事前に施行者に届出ていただき、相続による所有権移転の代位登記を済ませた上で清算金の徴収・交付を行いたいと考えています。
またどのような建築制限がかかりますか。
都市計画法による都市計画には様々な内容(例えば市街化区域と市街化調整区域の区分や用途地域のような地域地区、道路・公園その他の都市施設、土地区画整理事業その他の市街地開発事業)を定めますが、その意義は都市の将来像を示すと同時に、それを実現するために事業を施行したり、あるいはその内容が実現されやすいように規制を設けることにあります。
土地区画整理事業が都市全体としても重要なものとして位置づけられる場合には都市計画決定され、これにより都市計画事業として行われる(法3条の5)こととなります。この区域内での建築等は都道府県知事の許可を要することとなり、当該建築が都市計画に適合しているか、あるいは容易に移転または除却できるもの(階数が2以下で主要構造部が鉄筋コンクリート造でないこと)である場合以外は許可されないことになるのです(都市計画法53、54条)。
なお、地方公共団体、行政庁、都市再生機構、地方住宅供給公社等の公的機関が行う土地区画整理事業は、全て都市計画事業として施行されます。また組合施行でも都市計画事業として施行されている例が多く見育受けられます。
土地区画整理事業は、健全な市街地の造成による公共の福祉の増進を目的として(法1条)、公共施設の整備改善及び宅地の利用の増進を図る事業(法2条1項)であり、土地の交換分合を通じて土地の整地や整形化を行うとともに、道路、公園等を整備し、また、学校、病院等の敷地を計画的に確保すること等を主たる内容としています。この事業は、都市計画区域内(法2条1項)の原則として市街化区域内の土地について行われるものです。
一方、土地改良事業は、農業生産の拡大、農業構造の改善等を目的として、農用地の改良、開発、保全及び集団化のための施設の整備を行う事業で(土地改良法1条)、市街化区域以外の土地について行われるもの(土地改良法施工例2条5号)です。
土地区画整理事業は、旧耕地整理法を準用して施行していた時代があり、事業手法としては耕地整理事業の流れを汲む土地改良事業と類似するところがありますが、以上のように、事業の目的、内容、施行される地域等が異なります。
土地区画整理事業により整備される主な施設には、次のようなものがあります。(法2条1項、5項、令67条)
- 幹線道路…通常、都市計画決定されている地区内の根幹的な道路を整備します。
- 区画道路(生活道路)…幅員6m~9m程度の道路で、主として地区内の住民が利用する道路を整備します。
- 広場…駅前広場などを整備します。
- 公園・緑地…街区公園、近隣公園、緑地等を整備します
- 河川、水路等…河川、水路等を必要に応じて整備します。
この他に、土地の利用の増進を図るため必要な場合には、上下水道、ガス等の施設が整備され、学校、病院、官公署の支所等の用地も確保されることになります。(法2条2項)
土地区画整理審議会は、公共団体、機構等が土地区画整理事業を施行する場合に置かれ(法56条1項、70条1項、71条の4)、その委員は施行地区内の地権者を代表し、その意見を事業に反映するとともに、施行者と地権者の間に立って調整を行うことを主な役割としています。
審議会は、施行地区内の土地の所有者及び借地権者から各別に選挙された委員で構成されます(法58条1項)が、必要に応じ、委員の定数の5分の1以内の学識経験者を委員にすることができます(法58条3項)。委員の数は、施行地区の面積に応じ、10人から50人までの範囲内で定められ(法57条)、その任期は、5年を超えない範囲内で施行規程で定められる(法58条6項)こととなっています。
また、審議会は委員の過半数の出席により成立し、その議事は出席委員の過半数で決まる運営がなされます(法62条3項)。
なお、組合施行の場合は主要な事項は総会または総代会で決定されますので審議会は置かれません。
(参考)
審議会に諮る場合、審議会の同意を得なければならない事項と、意見を聴かなければならない事項とがあります。
- 審議会の同意を得なければならない事項(議決事項)
- 評価員の選任(法65条1項)
- 保留地の決定(法96条3項)
- 公益施設用地の換地の位竃、地積等の特別の考慮(法95条1項)
- 工区間の飛換地(法95条2項)
- 公益施設用地の創設換地(法95条3項)
- 重要文化財等の所在する宅地についての特別の換地(法95条4項)
- 公益施設用地の清算金についての特別の定め(法95条5項)
- 公共施設の廃止に伴う公共施設用地の換地不交付(法95条6項)
- 宅地地積の適正化に関する諸決定(法91条2.3.4項)
- 借地地積の適正化に関する諸決定(法92条3、4項)
- 宅地又は借地権の換地について、立体化をする場合の諸決定(法93条1、2項)
- 審議会の意見を聴かなければならない事項(諮問事項)
- 換地計画の作成(法88条6項)
- 換地計画の縦覧に際して提出された意見書の審査(法88条6項)
- 換地計画の変更(法97条3項)
- 仮換地の指定(法98条3項)
- 減価補償金の各権利者別の交付額(法109条2項)
土地区画整理事業は「換地」、「減歩」等の独得の手法を用いますので、事業の円滑な施行を図るためには換地計画等に関する専門的技術者の養成・確保が必要となります。このため、昭和57年に土地区画整理法が改正され、建設大臣が行う技術検定制度(土地区画整理士技術検定)(法117条の3第2項)が設けられ、この検定に合格した者を「土地区画整理士」といっています。土地区画整理事業はまちづくりの上で大きな実績をあげてきていますが、この土地区画整理士の活用により、ますます事業が円滑かつ迅速に進められることが期待されます。
土地区画整理審議会の委員は、地区内の土地所有者と借地権者から各別に選出されます。
委員の選挙権は、土地の所有者と借地権者が有します(法58条1項)が、各人はその土地の大きさや筆数にかかわらず、1個の選挙に関する権利を有することとなります。ただし、所有者でかつ借地権者でもある者はそれぞれ1個の権利を有することとなります。また、この場合、注意しなければならないことは、未登記の借地権は施行者に申告することによってはじめて権利を得ることとなることです(法58条2項)。
被選挙権については、選挙権を有する者であっても未成年者、被後見人、刑の執行を受けている者等の一定の者は有しないものとされています。
法人も個人と同様に選挙権および被選挙権を有します。
選挙は選挙の公告の日から100日以内の選挙期間で行われ(令19条)、公告の日から起算して20日を過ぎた日現在で選挙人名簿を作成し、2週間縦覧します(令21条)。これに対する異議について決定したときは、その旨を公告し、選挙へ名簿を確定したうえで、土地の所有者と借地権者からそれぞれ選挙すべき委員の数を公告します(令22条)。
選挙により当選入が決定した後に、当選人の住所・氏名の公告・通知が行われ、当選の効力が発生することとなります(令35条)
(参考)手続フロー
1.選挙期日の公告 ←20日間→ 2.選挙人名簿作成の基準日(名簿の作成) 3.選挙人名簿の縦覧 ←2週間→ 4.異議申立の決定の公告等 5.立候補の届出又は推薦の届出 6.候補者氏名・住所の公告 ←20日間→7.投票、開票 8.当選人の決定 9.当選人の住所・氏名の公告・通知
事業を施行するにあたっては、設計、工事、補償等のために個人の土地に立入って各種の測量、調査を行う必要か生じる場合があります。個人の土地に立入って測量等を行う必要があるときは、その3日前までに土地等の占有者に通知(法72条2項)した上で、担当職員または調査を委任された者が市町村長発行の土地立入証等を携帯した上で土地に立入って調査を行うことができるとされています。
また実務上は、事前説明や話し合いにより了解を得て土地の立入調査を実施するのが一般的です。
道路計画にあたっては、交通の安全性を確保し、良好な街並みを形成するように策定しますが、もちろん既存の道路も十分考慮します、しかし、幹線道路については、都市の根幹的自動車交通路として円滑な都市活動を維持し、都市の骨格を形成するもので、広域的見地から定められるものですから、既存の道路を十分活用できない場合も多く生じます。
一方、区画道路は、沿道宅地への交通サービスや環境保全、さらには供給処理施設等を収容する役割を担うもので、できるだけ既存道路を生かすように工夫もなされています。しかし、この場合でも良好な街づくりのために、道路巾員を拡げたり線形を変えて街区を整形することも必要になります。
土地区画整理事業では、面的にかなりの広範囲にわたる様々の土地について公平な評価を行う必要があることから、路線価式土地評価方法が最も適当な方法として全国的に採用されています。
路線価式土地評価方法とは、まず各街路ごとにこれに接する標準地を想定し、この標準地の単位地積当たりの価格を指数で表示したものを当該街路の路線価とし、これを基礎として、同じ街路に接する他の土地については、個々の土地の個別的要因を勘案して数値を増減して評価を行う方法です。
評価の時点としては、換地設計のための評価は事業計画認可時とし、清算金等を定めるための評価は工事概成時としていますが、いずれの場合も従前の土地と換地は同一時点で評価をします。すなわち、換地設計のための土地評価は、事業計画認可時における従前の土地の価格と、その時点で事業が完了してできあがっていると仮定した換地の価格を比較するのであり、清算金等を定めるための土地評価は、工事概成時の換地の価格と、その時点で整理されないままの状況でそこにあると仮定した従前の、土地の価格を比較することになります。
仮換地が指定された場合は、従前の土地について使用し、または収益することができる者は、すべて仮換地について従前の土地についてと同様な内容の使用収益をすることができます(法98条1項)。したがって、土地の所有者、借地権者以外の権利者も仮換地について使用収益をすることができます。
換地は、すべて道路に面するように定められるわけですが、さらに、原則として道路の高さとほぼ同じ高さに施行者が造成し、その費用を負担します。
しかしながら、地形的に整理後においても道路より低い宅地が生じざるを得ない場合もあります。例えば道路に勾配がある場合には、宅地の出入口を想定して、その出入口を道路と同じ高さにするなど、できるだけ配慮して宅地高を定めます。
また、特殊の場合として、地権者から、水田として継続利用するため、道路より低目の造成が申し出られることがありますか、このような要望に対する配慮も可能です。
その他いろいろな場合がありますが、施行者は地区の事情を調査して、宅地造成について必要な対応を行うこととしています。
この地区の環境に目を向けてみてください。例えば、道路の幅員が狭いために交通事故の発生が多い危険な場所や、消防自動車が入れずホースの届かない場所がありませんか。また、下水道が未整備なため、大雨のたびに浸水したり、汲取り便所でがまんするようなことはありませんか。あるいはまた、街の中に残っている貴重な緑を是非残しておきたいと思ったり、子供連は道路ではなく公園で遊ばせたいと感じたことはありませんか。
まちは安全で、快適で、健康的でなければならないのに、この地区の現状は整備が未だ十分ではありません。放置しますとますます環境が悪化しますので、主観的な満足度だけでなく、地域全体の利益、福祉を考慮して良好なまちづくりを行うようにすべきではないでしょうか。また次の世代の人々のためにも良い環境を残すことが大切です。そこで、まちづくりの有力な手法である区画整理を、この地区の整備にも採用することが必要であると考えます。
土地区画整理事業は、道路、公園等の公共施設の整備改善と宅地の利用増進を目的として健全な市街地造成を図る事業です。
事業施行後は、なるべくすみやかに市街化の方向へ土地地利用の転換をお願いしたいのですが、農業を続けていくこともできます。その場合、施行者としても営農に配慮した用排水施設の設置や整地を行うように努めます。ただ、減歩による耕地面積の減少や、周辺の宅地化による日照などの問題がありますので、今まで通りの条件での営農は困難となる場合もあります。
このため当面の営農希望者が多い場合は、特定土地区画整理事業(大都市地域に限る)、段階土地区画整理事業等の手法のように営農希望者を一定の地区内にまとめて換地することもできます。
個々の土地の減歩率は、従前の土地と換地のそれぞれの土地評価によって決められるものであり、農地と宅地の減歩率の相違を一概に言うことはできません。ただし、新市街地における傾向としては、既に宅地として利用されている土地と農地とでは、周辺の道路、排水施設等都市施設の現況が異なり、農地の方が区画整理による利用価値の増進が大きくなるため、減歩率も高くなるのが一般的です。
土地区画整理事業の施行によって農耕地が減歩されることは農業経営者にとっては大きな問題であると思いますが、この地域は都市計画において市街化区域として定められたことにより、おおむね10年以内に計画的に市街化を図るべき地域とされています。土地区画整理事業において必要となる公共施設用地や保留地は、地区内の農地を含めたすべての土地について、その「宅地」としての利用の増進の度合に応じて、公平に減歩により負担していただくことになります。この点で農地も他の土地と同様に取り扱われるのです。
もちろん換地を農地として利用することはできますが、減歩は整理前に比べた「宅地」としての利用価値の増進の範囲内で行う地権者の受益に応じた負担ですから、減歩のために農業収入が減少しても、この減収を取り出して特別に補償等はいたしません。
農耕による収益の損失に対する補償として、休耕による農業の休止補償と、作付後、収穫前におけるその作物の除却によって生ずる損失に対する立毛補償があります。
休止補償は、商業等の休止補償と基本的には同じであり、休止期間中の固定的な経費および所得減を補償します。
立毛補償については、粗収入見込額から農業経営費及び除却した立毛に市場価格がある場合にはその処分価格の合計を控除して算定します。
土地区画整理事業を施行するには、道路、公園などの整備や建築物の移転などのための費用が必要ですが、その事業費は施行者が次のような財源をもとに負担するものとされています。
主な財源には、国及び地方公共団体から受ける補助金(法121条)、重要な公共施設の整備を行うべき地方公共団体等から応分の負担を求める公共施設管理者負担金(法121条)、地権者から提供していただいた土地の一部を保留地として定め、それを売却して得る保留地処分金法96条)などがありますが、施行者や事業内容によって、これらの財源の組合せは異なります。
土地区画整理事業では地区内の全ての土地について整理前と整理後の土地価額の評価を公平に行う必要があります。
公共団体・機構等施行の場合には施行者は土地区画整理審議会の同意を得て、土地又は建築物の評価に関して経験を有する3入以上を評価員に選任しなければならない(法65条1項)ことになっています。
施行者が換地計画において清算金または保留地を定めようとする場合、減価補償金を交付しようとする場合及び立体換地を定めようとする場合には、土地、土地に存する権利ならびに建築物についての価額の評価について、評価員の意見を聴かなければならない(法65条3項)ことになっています。
また組合施行の場合には評価員を置くことは義務づけられておりませんが、公平な土地評価を行うために評価員を置くことが望まれます。
平均減歩率は、事業計画の案の内容として(法16条、54条)皆さんに示されますが、この率は、施行者が、第1に整理前後で公共用地がどの程度増加するか、第2に保留地は必要な資金額及び土地の利用価値の増進からみてどのくらいが妥当かを勘案して、区域全体の平均の数字として決められています。
つまり、従前の公共施設の整備水準が低ければ平均減歩率は一般に高くなることになります。
平均減歩率は事業計画の構成項目ですから、これに対して事業計画の縦覧の際には意見書を提出することができます(法18条、20条、55条)。
なお、個々の土地の減歩率は換地計画において増進の度合いに応じて個々に定められますので、通常は平均減歩率とは異なる数字となります。
土地区画整理事業によリ減った土地は、皆さんの受益の範囲内で負担してもらうものであり、買い上げるわけではありません。
土地区画整理事業は、道路や公園などの公共施設等の整備と土地の区画の整形化等による整然とした街づくりを行う事業ですから、事業の施行地区内の土地の一部は、新設・拡張される道路や公園の用地に充てられたり、事業に必要な費用に充てるため保留地として売却されたりします。そこで、結果としては、従前の各々の土地に対して新たに定められる換地は、従前より面積が減少することは通常避けられません。しかし、一般に事業によって居住環境が向上し、土地の利便性も増大することになるので、土地の面積が減少することによる損失よりも地権者が受ける利益の方が大きくなるように事業は進められます。ですから、減った土地について買いう上げることはいたしません。
保留地とは、事業の施行によリ整備された土地のうち、一部を換地として定めないで、事業費に充当するために売却したり、一定の目的に使用するために施行者が確保する土地をいいます。保留地は、事業計画でその予定地積が定められます(令6条2項4号)。
公共団体等施行の場合には、事業施行後の宅地価額の総額が、施行前の宅地価額の総額を超える場合において、その差額に相当する額の範囲内で保留地を定めることができます。この場合、保留地は事業費に充てるためのものに限られ、土地区画整理審議会の同意を得て定められます(法96条2項、3項)。また、個人施行や組合施行の場合には、事業費に充てるため、または規約や定款で定める目的のために保留地を定めることができます(法96条1項)。
法人の組合員にも選挙権はあります。この場合、法人の指定した人が代理人になり権利を行使します。その際法人の資格証明書や印鑑証明書が必要です。一方組合の役員は自然人に限られますので、法人そのものが役員になることはできません。法人の役員が組合の役員となるための被選挙権を行使することになります(法27条3項)。また、定款で特に組合員以外の者を役員に選任することができるように規定すれば、法人の代表者を個人の資格において役員に選任することができます。
保留地の総地積及び全体の処分価格は事業計画で定められることになっていますが、個々の保留地の位置や処分価格は仮換地指定の段階でほぼ決まります。その際、保留地に関する事項の詳細は公共団体等施行においては土地区画整理審議会の同意を得て(法96条3項)、また予定価格については宅地利用増進率、公示価格等を考慮し評価員の意見を聴いて(法65条3項)定められます。組合施行においては、処分価格については多くの場合評価員の意見を聞いたうえで総会または総代会の議決により定められます。なお個々の保留地の位置、地積、処分価格等は換地処分により確定します。
区画整理の設計にあたっては歩行者の安全対策について、歩行者交通と自動車交通の流れをできるだけ分離する方向で、具体的には次のような事項について十分配慮をしています。
- 無用の通過交通が住宅地区内に侵入することを排除するように、幹線道路から生活道路に至る段階的な道路網を構成する。
- 9m以上の道路には歩道を設け、また、適宜歩行者専用道路を配置して、住宅地と学校、公園、コミュニティ施設、駅、市街地中心部等を結ぶよう設計する。
- 幹線道路の横断施設として、横断歩道のほか必要に応じて歩道橋等を設ける。
保留地処分金が事業計画で定められた額より上まわった場合には、事業計画を変更し、上下水道をはじめ地区内における生活環境面から見て不十分な施設を完備する等、上回った保留地処分金を事業費に充当して整備水準の向上を図ることが、差額の調整の方法として最も望ましいと考えています。
土地区画整理事業は、土地の交換分合により施行地区内の公共施設の整備改善及び土地の利用増進を図る事業であって、現実の土地の利用状況をすぐさま変更するというわけにはいきません。
したがって、無秩序な住宅と工場の混在の問題を土地区画整理事業のみによって完全に解消することは、現実としてなかなか困難なことてすが、土地区画整理事業の施行に伴う移転を機会に問題の解消に努めています。
都市全体からみた環境や機能の保持向上のため、市街地においては土地利用について都市計画として住居、商業、工業等の用途地域が指定され、建築物の用途、形態、容積率等に制限が加えられています。
この用途地域を変更するかどうかは、都市全体からみた街づくりの必要性から決められることです。もちろん用途地域の変更と区画整理を組み合わせて計画的な街づくりを一層きめ細かく進める場合もあります。しかし、地域の特性や区画整理の計画内容によって、どのような用途地域にするのが良いかについての考え方も異なりますので、区画整理を実施したからといって用途地域が必ず変更されるとは限りませんし、変更の時期も地区によって異なります。
土地区画整理事業に伴って用途地域が変更される場合、既成市街地では仮換地指定に合わせて変更される場合が多いようですが、それは建築物の移転や小規模宅地の利用などに関連して建ぺい率、容積率の引き上げなどを考慮する場合があるからです。
また新市街地の例では、都市基盤施設がある程度できあがる事業の収束段階に変更される場合があります。
土地区画整理事業では、従前の土地に対して照応した換地が定められますが、立体換地とは、この換地を定めるかわりに建築物の一部と建築物の存する土地の共有持分を取得することができる制度(法93条1項)です。
立体換地手法は、減価補償金地区で土地の先買いの困難な地区、小規模宅地が多く平面換地では十分な規模の土地の確保が困難な地区、新市街地等で共同住宅等の計画的な建築物整備が必要な地区等での活用が想定され、これらの問題を解決するのに適した手法です。
立体換地で取得する建物は、土地区画整理事業で施行者が整備する耐火構造の建物で、立体換地される権利者の共同ビルとなります。従って、具体的には立体換地では次の3つの権利を取得することになります。
(1)ビルのうちの専有部分、(2)ビルの共用部分(廊下、階段等)の共有持分、(3)ビルの敷地の共有持分
立体換地で取得することになる権利の算定にあたっては、通常の土地に換地される場合と比べ公平さが保たれるように配慮して決定します。
また、平成元年度より本手法のより一層の推進を図るため、立体換地建築物の整備に対して国の助成が行われております。
土地区画整理事業では、従前、私道に面していた宅地もすべて公道に面するように換地を定めるのが一般的で、このような場合は私道は不用となり廃止されることになります。
たがって、このような私道については換地を定めないことができることになっており(法95条6項)、多くの場合そのようにしています。ただし、換地を定めないことにする場合には、公共団体等施行事業では土地区画整理審議会の同意が必要であり、組合施行事業の場合は総会又は総代会の議決が必要です。
なお、換地が定められない場合には、清算金が交付されます。